絶滅危惧種群生の保全活動から山村保全へと広がる活動「綱木クマガイソウを守る会」(いわき市田人町)

▼旧街道(塩の道)を残す綱木(つなぎ)地区

 いわき市田人町石住綱木地区は、昔、塩の道として人々が往来した清道川(入遠野川支流)沿いの山道を7kmほど進んだ先、標高450mにある地区です。農業で生計をたてていた地区ですが、住民の高齢化・過疎化が進み家庭菜園ほどの畑がみられる山村です。

▼クマガイソウ保存に尽力した先人

 クマガイソウは花の形が源平合戦に赴く熊谷直実が背負うホロに見立てこの名がついたといわれています。綱木地区でクマガイソウを育てるようなったのは30数年前。故平子(たいらこ)長雄さんが炭焼きで山に入った際、見つけていたクマガイソウ群生が盗掘によって消滅しないようにと、自宅の裏山で守り育ててきたのがきっかけです。試行錯誤を重ねながら3万株ほどまでに増やしてきましたが、高齢となり管理作業が難しい状況を迎えました。

▼住民とボランティアで守る会結成

 平子長雄さんの意志を継いだのは長雄さんの遠縁にあたる平子(たいらこ)忠徳さん。管理を続けるも盗掘被害で個人管理の限界等から2014年綱木地区住民とボランティアの有志40人で「綱木クマガイソウを守る会」を結成しました。住民会員を中心に日々の手入れを重ねたことで株も増え、開花シーズンには、県内外から6000人程が訪れる観光スポットになりました。

▼コロナ渦と火事を乗り越え

 コロナ渦では一般観覧を中止しましたが、守る会ではクマガイソウの手入れと合わせ、地区の休耕地を荒らさないようにと200株の桜を植樹しました。そんな中、2022年1月、群生地に隣接する事務所住宅が火災で全焼。「火の勢いが強くクマガイソウは全滅したかもしれない。」と覚悟していた4月、新芽を見つけた忠徳さんは「守り続けなければ」と想いを強くしました。

▼山村を守るこれから

 地区の過疎化で会員も12人程になった守る会。小人数でもクマガイソウと桜、山々の緑から紅葉と変る綱木地区の魅力を、守る活動を進めています。

(2025年5月9日取材S)

■名称 綱木クマガイソウを守る会

■住所 福島県いわき市田人町石住綱木

■TEL0246-89-3414(昼間のみ)

写真トップ:綱木オクマガイソウを守る会では、平子忠徳さん(写真左手奥)を中心に、一年を通しての管理作業をしています。結成当初40人いたメンバーも高齢化で、現在は12~3人が作業・案内活動に参加しています。

写真2:会員の清水康正さん(写真-1右手奥)は、守る会結成時から、地区外から通って活動中。クマガイソウ命名の由来や群生地内を、軽妙な語り口で案内してくれます。シーズン中の観覧後は、温かい飲みもののおもてなしもあります。

写真3:故平子長雄さんの自宅裏庭から植え始めたクマガイソウは、西側杉林の下一面に広がり、コロナ渦後は北面斜面に広がっています。遊歩道も守る会が手作業で整備をしました。