▼青森県から上京した大学生
戦後の第一次ベビーブームに生まれた長澤和夫さんは、青森県五所川原市で生まれ育ち、大学進学を機に18歳で上京しました。そして新聞店に住み込みで働きながら大学へ通う「新聞奨学生」となりました。今から半世紀以上前の時代は、地方から上京する場合、学費が負担され、食・住がすべて無料の「新聞奨学生」が少なくなかった。
▼順調だった会社員時代から独立、苦難の道へ
新聞配達の朝は早く、当時の建物にはエレベーターが無く、配達は常に走っていたという。昼間は大学で勉強し、放課後は一目散に戻り、夕刊の配達と遊ぶ暇など無かった学生時代。しかし、その分、学業に励んで大手健康機器メーカーに新卒採用された。仕事は順調だったが、28歳で退職し、プラスチック金型の会社を立ち上げた。しかし、そこに落とし穴があった。事業はうまくいかず借金だけを残して会社は畳んだ。
▼人生を変える出会いがその後大きく変化
そこで頼ったのは、学生時代、お世話になった新聞店のオーナーだった。住み込みで働きわずか7年で借金を返済したが、貯金が全く無かった長澤さんにお金を貸してくれたという。その頃、田村市常葉町出身の女性と出会い、結婚。4人の子宝にも恵まれた。長澤さんは一番困っている時に手を差し伸べてくれた人への感謝と、いつか自分も困っている人に手を差し伸べたいと思ったという。
▼妻の地元常葉町へ転居、そして子ども食堂えがお開設
常葉町へ移って、2年前にこども食堂えがおを始めた時、これでやっと困っている人に手を差し伸べられる、恩を返せるという気持ちになった長澤さん。スタート時はたった一人でメニュー決め、買い出し、調理、配膳、片付け、などの作業すべて行っていたが、今では、ハイリャンセを利用するグループのお母さんたち5人が協力したいと手を挙げ、一緒に活動してくれている。
▼こどもの笑顔が原動力
こどもたちが食事のあと毎回、「おいしかったよ」と笑顔で言ってくれるひと言に疲れも吹き飛ぶという。今では常葉町だけでなく、こども食堂の無い隣町からも参加してもらえることに満足気な長澤さんでした。
(2025年5月14日取材Y)
■名称:こども食堂えがお
■開催場所:〒963-4602 福島県田村市常葉町常葉中町32 ときわ交流スペース「ハイリャンセ」
■開催時間:毎月第2土曜日 16時から19時
■電話:090-2335-0982
写真トップ:田村市の協力を得て、交流スペース「ハイリャンセ」を無料で借りることができた。仕込み作業をしていると、ハイリャンセを利用している人たちから「頑張って」、と声を掛けられたり、食材の提供を申し出られたりすることもあるという。
写真2:田村市内のこども食堂では唯一、こども・大人無料で運営している。お米や食材の寄付は大変有難いと話す長澤さんだが、開設時から毎回2万円を自腹で負担し、肉や野菜などメニューに合わせて購入している。

写真3:現在の目標は80歳までこども食堂を頑張ること、という長澤さんだが、持病もなく健康には自信をもっているようです。これも若い時から新聞配達で鍛え上げた身体のおかげと、辛かった仕事にも感謝を述べていた。
