町に近づくにつれ、車の窓から見える山並みにピンクの霞がかかりはじめ、「あ、春が来たんだ」と実感します。ここ阿武隈には、全国から花見客が訪れる桜の名所が点在しています。今回は、あぶくま地域づくり推進機構のおすすめスポットとして、この阿武隈の春をたっぷり現地取材してきました。桜の絶景はもちろん、地元人しか知らないような隠れた名所の魅力もあわせてご紹介します。
写真トップ:芹ケ沢の桜 せりがさわのさくら
三春町の中心地から少し足をのばすと、芹ケ沢という小さな集落にたどり着きます。ここには、人混みとは無縁の、静かな春の風景が広がっています。見どころは、集落を見守るように咲く桜の木々。田んぼや山並みにとけ込むように咲くその姿は、華やかさというよりも、どこかほっとするやさしさに満ちています。日常を忘れて、ゆっくりと桜を味わいたくなる、そんな場所です。観光名所としてはまだあまり知られていない樹齢350年のベニシダレザクラ。だからこそ出会える、素朴で心に残る春があります。
三春町 芹ケ沢の桜(駐車場無)
〒963-7707 福島県田村郡三春町大字芹ケ沢字横台道28

写真2:八十内かもん桜 やそうちかもんざくら
八十内かもん桜は、三春町の住宅街にある高台・八十内公園内に立つ、樹齢350年のベニシダレザクラです。美しい枝ぶりが特徴で、春になると公園一帯をやさしい紅色に染め上げます。地域の人々に親しまれ、公園のシンボル的な存在となっています。その歴史的・文化的価値から、三春町の天然記念物にも指定されています。
三春町 八十内かもん桜(駐車場無)
〒963-7711 福島県田村郡三春町桜ケ丘3丁目11

写真3:城山公園の桜 しろやまこうえんのさくら
三春町の中心部に位置する城山公園は、かつて三春城が築かれていた歴史ある場所。現在は町民の憩いの場として親しまれ、春には園内を彩る樹齢80年に達する百余株の様々な桜が訪れる人々を迎えてくれます。見頃の時期には、かつての城郭をやさしく包むように淡いピンクの景色が広がります。高台から見渡す町並みと、桜に染まる一面の景色は、訪れた人の心に残る、忘れられない春のひとときとなるでしょう。
三春町 城山公園の桜(駐車場有)
〒963-7759 福島県田村郡三春町大町

写真4:光岩寺桜 こうがんじさくら
三春町の高台に佇む光岩寺は、四季折々の自然に包まれた静かな寺院。春になると境内の桜が咲き誇り、厳かな空気の中にやわらかな色彩が広がります。その優しい景色の中に力強く咲くのは樹齢200年のエドヒガン。風に揺れる花びらと、お寺のたたずまいが調和したその風景は、華やかさというよりも、心がほどけるような優しさにあふれています。観光地のにぎわいから少し離れた、静かな時間を楽しめる桜の名所です。
三春町 光岩寺桜(駐車場有)
〒963-7752 福島県田村郡三春町字亀井122

写真5:福聚寺の桜 ふくじゅじのさくら
三春町にひっそりと佇む古刹・福聚寺は、静寂の中に凛とした気配が漂う場所。春になると境内の桜が咲き、その落ち着いた風景にやさしい彩りを添えます。石段をのぼり、竹林を背景に咲くのは樹齢450年の2本のベニシダレザクラ。歴史ある伽藍とともに咲くその姿は、訪れる人の心にそっと残る美しさです。観光地の喧騒から離れて、ゆっくりと季節の移ろいを感じたい方におすすめです。
三春町 福聚寺の桜(駐車場有)
〒963-7767 福島県田村郡三春町字御免町194

写真6:雪村桜 せっそんさくら
郡山市西田町に佇む、樹齢500年を超えるエドヒガンの一本桜。室町時代の禅僧・画家として知られる雪村が晩年を過ごした庵のそばに咲き、静かな山里の春を彩ります。しなやかな枝ぶりに淡い花を咲かせる姿は、まるで雪村の精神を映すよう。背景の竹林の緑と桜色が美しいコントラストを生み出し、風の音だけが響く静寂に心が癒されます。
郡山市 雪村桜(駐車場有)
〒963-0911 郡山市西田町大田雪村174-2

写真7:金毘羅桜 こんぴらさくら
石川郡玉川村、小針竹千代さんの敷地内に立つ、樹齢300年の見事なベニシダレザクラ。見頃を迎えると、空からふわりと垂れ下がるように花を咲かせ、訪れる人々をやさしく包み込みます。周囲にはたくさんのスイセンや菜の花も植えられ、色とりどりの春の花々が咲きそろう様子はまさに圧巻。期間中は18時半から20時半までライトアップとイルミネーションも行われ、夜の闇に浮かび上がる幻想的な桜の姿を楽しむことができます。ライトアップは桜が散るまで続けられる予定です。昼と夜で異なる表情を見せる金毘羅桜。ぜひ現地で、その美しさを感じてみてください。
玉川村 金毘羅桜(駐車場有)
〒963-6315 福島県石川郡玉川村大字中字向62
春の風にそっと揺れるあぶくまの桜たち。
その一輪一輪に込められた物語が、きっとあなたの心にも静かに咲きますように。
ぜひ、この春だけの風景に会いに来てください。
(2025年4月16日取材T)