東北一のキュウリ農家を目指して(三春町)

▼祖父の思いを継ぎ後継者に

三春町の株式会社オフリンク(大内俊昌社長)は、有機物を活用した土壌づくりと、徹底した温度・湿度管理により、品質の高いキュウリや、果物のように甘いトマトを提供していることで知られます。同社が運営する大内ファームは、父・昭喜さんが一から始め、その後順調に規模を拡大し、福島県農業賞を受賞するまでに築き上げました。俊昌さんは高校卒業後、地元の化学メーカーに就職しましたが、28歳の時に祖父・昭三さんが後を継ぐよう促して亡くなったことをきっかけに、「いままで育ててもらった恩返しを」と後継者としての決心を固めます。

▼震災乗り越え販路拡大

茨城や長野での研修を経て、帰郷し父を手伝っていた時に東日本大震災に遭遇しましたが、就農の決意は揺らがず、その後1年間のアメリカでの研修を経て、父親の下で経験を積みます。風評被害が厳しくなる中、俊昌さんは卸売市場に頼らず、自前で販路を拡大する方向へ舵を切ります。「その時に、仲買業者の方から販売先を紹介してもらうなど、多くの方々に助けられながら販路を広げました」と振り返ります。父も「売上金の回収だけはしっかりするように」とだけ助言し、方針転換がスムーズに進みます。さらに、同時期の起きた土壌障害で、かえって糖度の高くおいしいトマトに育ったこともチャンスととらえました。

▼技術革新で品質向上

2017年に株式会社オフリンクを設立し、キュウリの栽培ではソーラー自動灌水システムの導入や、糖度9度という高糖度トマト栽培など、新技術に積極的に取り組み、品質・収量の向上に努めます。こうしたチャレンジ精神が、農林水産大臣賞と2回目の福島県農業賞の受賞につながりました。それだけにとどまらず、地域に先駆けてJGAP認証を取得し、農産物の安全確保や環境保全にも注力することで、ブランド力の更なる強化を図っています。

▼若手が憧れる農業へ

キュウリの栽培規模は県内有数ですが、「現在の倍に増やし、県内一に。その次は東北一のキュウリ農家になりたい」と俊昌さんは目標を掲げます。阿武隈地域では農業人口の減少と高齢化が深刻化していますが、「田村地方の高低差は、おいしい野菜が育つ要因でもある。野菜で稼ぎ、休みも取れて趣味も楽しめる環境をつくりあげられば、若い就農者もきっと増えるはず。私は、そうした憧れられる存在になりたい」と、地域農業のモデルケース確立にも挑戦しています。

(2025年9月18日取材M)

■名称:株式会社オフリンク

■住所:〒963-7719 福島県田村郡三春町大字貝山字佐藤六107

■インスタグラム https://www.instagram.com/ofs_link/

写真トップ:大内ファームでは20年以上にわたり、国内はもちろん海外からの農業研修生も積極的に受け入れています。「私自身が研修を受けた経験が現在の糧になっているので、作る環境が違っても同じ経験を味わってほしい」と俊昌さんは思いを明かしました。

写真2:キュウリは収穫後、鮮度を保つため、すぐに敷地内にある作業所で梱包作業が行われます。最盛期には、従業員総出で1日2回収穫し、1万5千本ものキュウリを出荷するとのこと。

写真3:キュウリの栽培面積は、県内トップクラスの1.5haを誇りますが、5年以内に露地キュウリを中心に規模を倍増させ、加工業務用としても出荷できる体制を整える計画です。