手すき和紙「遠野和紙」の魅力を発信し、「キガミヤ」を起業した高嶋祥太さん(いわき市遠野町)

▼阿武隈で生まれた遠野和紙

いわき市遠野町では山野で採れる良質な楮(コウゾ)、冬場の冷気と水に恵まれ和紙生産が盛んでした。その歴史は古く江戸時代に入る前頃から農家の兼業として発展してきました。しかし、明治以降は洋紙の大量生産におされ昭和40年後期には瀬谷家一軒だけとなり、紙漉き技術を継承してきました。

▼途絶えた紙漉きの技術を

 2014年、唯一の遠野和紙職人瀬谷安雄さん(享年89歳)が亡くなり、伝承者不在の中で、地域おこし協力隊による技術継承の活動が始まりました。その一人高嶋祥太さんは、2021年4月から3年間にわたり、手すき和紙「遠野和紙」の技術を継ぐために活動をしてきました。

▼建築素材と書道紙でつながった和紙

 山形県東根市出身の高嶋さんは、大学で上京し就職しました。不動産業で働くなか、障子やふすま、壁紙等に関心を持ち、親しんできた書道を通し、和紙のもつ魅力に惹かれていきました。和紙製造に関われる仕事を探していた折に、「遠野和紙」の技術伝承を担う地域おこし協力隊募集に出会い、楮生産から紙漉きまでの事業内容に心が響き、いわき市遠野町に移住してきました。

▼和紙を主力商品とした起業

 2024年4月に卒隊した高嶋さんは、遠野町に定住し、「遠野和紙」を製造、販売を行う「キガミヤ」を起業しました。書道家としても活躍し、和紙の魅力を発信するために、紙漉き体験会や書の個展なども開催しています。

▼これから・・・

 2025年9月21日~10月4日の期間中に4日間、旧入遠野中学校で「遠野和紙あかり展」を開催し、和紙灯篭などの作品105点を展示しました。会場には地元住民をはじめとした多くの方が来場しました。「たくさんの地元の人が見に来てくれました。昔と同じ需要はありませんが、染色やデザインの新たな可能性を感じた展覧会だった」と高嶋さんは話してくれました。「キガミヤ」の事業はこれから大きく広がります。

(2025年10月17日取材S)

■名称 キガミヤ 高嶋祥太さん

■住所 福島県いわき市遠野町上遠野字本町34-5

■工房 福島県いわき市遠野町入遠野字諏訪90

■E-mail taka.sho0315@gmail.com

■URL  https://www.instagram.com/iwaki_washi/

写真トップ:紙漉きを行う工房で原料となる楮(コウゾ)を見せてくれた高嶋祥太さん。2024年12月に収穫し、蒸して皮を剥ぎ乾燥保存した楮は、再度窯で蒸し、細かく砕いて、ようやく紙の原料となる。

写真2:旧入遠野中学校で開催された「遠野和紙あかり展」より。 2024年度から開催の遠野和紙を用いての照明作品コンテストには、全国各地から応募が寄せられた。

写真3:2025年9月13日~2026年1月18日まで、いわき市勿来町にある、いわき市勿来関文学歴史館では、遠野和紙の企画展示会を開催中。和紙作りの歴史、工程、作品を見ることができる。