逆境を越え、再び輪に-盆踊りが紡ぐ「復興」と「未来」(葛尾村)

▼葛尾村の盆踊り、逆境を越えて再び村の象徴に

かつて葛尾村の盆踊りは、行政区ごとに行われる地域行事だったが、原発事故による全村避難に伴って中断。2016年に落合・葛尾・上野川の3地区関係者が連携し、村全体で開催する「葛尾村盆踊り」として新たなスタートを切った。いまでは地元住民、移住者、大学生、進出企業のスタッフなど多様な人々が集う一大イベントへと進化した。現在、この「葛尾村盆踊り」を牽引するのが、実行委員会委員長の猪狩智裕さんだ。

▼伝統をつなぎ、未来を描く

村の中央部・落合地区の出身で、県立小高工業高校(現・小高産業技術高校)を経て、県立テクノアカデミーを卒業後、金属加工エンジニア、建設機械の整備士として働いてきた。2023年、浜通りへの転勤を機に実家に戻り、地域との関わりをさらに深めていく。

▼空白の2年を埋めた情熱

猪狩さんは実行委員会の立ち上げから参加、2021年の体制刷新に伴い、2代目の委員長に就任した。コロナ禍で2年連続の中止の事態に、「このままでは伝統が途切れてしまう」との危機感から、過去の盆踊りの記録映像を編集してYouTubeに公開するなどの努力を経て、2022年に盆踊りは再び復活した。「震災前とは形を変わったが、盆踊りが残っていることそのものが喜び。この文化を残していくため、参加した方の記憶に残るような盆踊りにしたい」と、毎年、委員たちと演出に知恵を絞る。

▼「村のために」との思いが新たな挑戦へ

盆踊りの活動を続ける中、猪狩さんは「村のためにもっと自分にできることはないか」との思いを募らせる中、葛尾むらづくり公社の職員募集を目にし、転職を決断。盆踊りを通じて信頼関係を築いてきたスタッフも多く。猪狩さんの抜群の行動力が評価され、2024年1月に正式採用。現在は事業担当次長として、むらづくりの最前線で活躍している。「国道改良が終わり、トンネル工事が進行しているいまが好機。観光誘客、移住を促進して、豊かで活気あふれる村にしいきたい」と意欲を燃やす猪狩さん。あふれる郷土愛とリーダーシップに期待が寄せられている。

 (2025年12月18日取材M)

■名称:一般社団法人 葛尾むらづくり公社

■住所:双葉郡葛尾村落合字落合20番地1 葛尾村復興交流館あぜりあ内

■URL https://katsurao-kosya.or.jp/
■連絡先:0240-23-7767

写真トップ:盆踊りは,復興のシンボルとしてだけなく、世代や立場を超えたつながりを感じさせる場でもある。猪狩さんは「参加した人の心に深く刻まれる体験として未来へつなぎたい」と強い思いを語る。

写真2:葛尾むらづくり公社の拠点がある復興交流館「あぜりあ」の駐車場は、盆踊りの再開以降、会場として毎年活用され、葛尾村の夏の風景として定着している。

写真3:猪狩さんがいま注力しているのが『とまとジャム』。村と連携協定を結ぶ東北大学大学院農学研究科の協力で栽培している「すずこま」を使用して商品化した。積極的な販路拡大で、地域の未来を開く産品に育てたい考えだ。