▼伝統工芸の技を住民の手で繋ぐ
400年ほどの歴史を持つ遠野和紙は、良質な楮(コウゾ)と水に恵まれたいわき市遠野町で農閑期の暮らしの糧として営まれてきた歴史があります。平成期になり、唯一の継承者が他界。その後、地域住民有志が集まり活動を続け、2022年「伝統工芸遠野和紙・楮保存会」として楮の生産、刈り取り、白皮にして紙漉きの原料づくり、紙漉きに至るまでの工程を重ねてきました。
▼保存会の活動は通年
楮保存会の現在の会員のほとんどは遠野町の住民で、50歳代から最高齢90歳の女性を含む約20名が活動しています。春から10月頃までは楮畑の管理を月に3日程で、主に楮の剪定や草刈りなどです。11月からは楮の刈り取りから紙漉きまで、週3日の作業を3月ごろまで続けています。
▼和紙原料への工程は多岐に
冬期の作業は多岐にわたります。遠野町内10か所ほどの圃場から楮を刈り取り、入遠野地区にある「遠野和紙工房 学舎」にて楮の枝の長さを揃え、大釜で枝を2時間かけて蒸し上げます。柔らかくなった枝からするっと剥ける皮が紙の原料となります。一度乾燥させ、また水に一晩漬けて外皮を剥く。残った内側の白皮が紙漉きの基となり、よく乾燥させて保存させるまでの一連の工程を会員みんなが協力して進めていきます。
▼みんなで一緒だから、楽しく
今年は敷地内に新たに大釜を会員で自作したことで、効率よく作業できるようになった。「それぞれに、得意なこと、できることをしてるのよ。毎回でなくても来れる日に。ここでみんなに会って話をしながらできることが楽しいのよ」。楮の外側剥き作業をしながら、3人の女性のお話は止まりません。
▼活動を継続させ、技の継承へ
遠野町は阿武隈地域でも標高は高くなく積雪は少ない地域ですが、楮の作業、紙漉きは寒さが増すこれからが本番です。作業には厳しい日もありますが、高木忠行会長を中心に地元会員と新たに移住した地域おこし協力隊3人が加わり、次世代への技術継承、地域振興を目標に活動は続きます。
(2025年12月10日取材S)
■名称 伝統工芸遠野和紙・楮保存会
■住所 福島県いわき市遠野町根岸治白幡40-1
■連絡先 0246-89-2111(いわき市遠野支所内)
■URL https://www.instagram.com/tonowashi_kozo_hozonkai
写真トップ:保存会の会員が集まり、蒸しあげた楮の枝からの皮剥き作業。写真奥に新たに作った大釜。2時間かけて蒸しあげた枝は、熱いうちに皆で短時間に剥き作業を進める。

写真2:一旦乾燥された皮は、一晩水につけると外側の皮がふやけ、剥がしやすくなる。ゴムを張った台で抑え、専用の鎌で外側の皮を剥ぎ取っていく。おしゃべりの楽しい時間でもある。

写真3:保存会の活動についた地域おこし協力隊(岩本さん(左)と森さん。2025年着任。)12月には3人となった。和紙の新たな商品として「御城印」を制作した。遠野町の中世古城上遠野城と八潮見城など。(購入問い合わせは、いわき市遠野支所へ)

