▼気持ちのよい山間の空間にその店はあった
「地図にないパン屋」、おいしいと勧められたので行ってみようと思ったが、グーグルマップで検索しても確かに出てこない。インスタグラムのサイトに記載された目印を頼りに行ってみた。気持ちのよい山間の道を進んでいくと「天然酵母パン」と描いたのぼり旗が見えて、無事にたどり着いた。
▼月に2日ほどしか開店しないパン屋さん
「地図にないパン屋」の営業は不定期で、おおむね月に2日ほどしかやっていない。運よく店主の陣野千鶴さんに話を伺うことができたので、気になる店名の由来を聞いてみた。もともと天然酵母に惹かれてパン作りを習うようになって、作ったものを知り合いに分けているうちにおいしいと評判になり、名前の「ちづる」にちなんで「ちづパン」と呼んでもらえるようになった。これをもじって今の店名にしたそうだ。
▼不定期な開店日は子育てとの両立
陣野さんには、10歳になる男の子が一人いるが、発話が出来ないという障害があり特別支援学校に通っている。障害の特性から、人とのコミュニケーションが難しく、千鶴さんの存在が欠かせないが、子どもには何でもやらせたいと考えている。そのため、子育てを最優先にしつつ、自分のやりたい事も出来るように、現在の仕事スタイルとなった。家計支持者がしっかりしているから出来ることだともおっしゃっていたが、とても素敵な生き方だと思った。
▼人気は固いパンと人柄
取材の途中、パンを買いに来られる方にも声をかけてこの店に来る理由を聞いてみた。みなさんの答えは、ほぼ共通して「固いパンが好きだがなかなか売っていないから」に加えて「千鶴さんの人柄が好きだから」とのこと。そしてみなさん予約をして、店に来てから会話を楽しんでたくさん買っていくことも共通していた。開店日が少ないため、買いだめして冷凍しておくのだそうだ。
▼各地のマルシェにも出店
開店してもうすぐ4年になるが、評判が広まりマルシェに出店することも増えてきた。棚倉町でマルシェを主催している人の話では、すぐに売り切れてしまうほどの人気だったようだ。また、町の施設でパンづくり講座も担当しているが、10名の定員が毎回満席になるという。子育てを大事にしつつ、自分のやりたいことを実現している陣野さん。次は何を始めるのか楽しみである。
(2024年9月2日取材 I)
■名称 「「地図にないパン屋」」
■住所 福島県東白川郡棚倉町大字北山本字居伝金290-2
「(有)陣野林業」で検索してそこを目印に
■SNS https://www.instagram.com/chizpan_/
写真トップ:小さなお店にパンがぎっしり
店内はパンがぎっしり並んでいるが、予約で取り置いているパンがほかにもあり、仕込みの大変さが想像される。陣野さんはシャイで写真が苦手だとおっしゃるのを無理して後ろ姿を撮らせてもらった。
写真2:店の入り口に立つのぼり旗
「天然酵母パン」ののぼり旗が見えてたぶんここだろうと思ったが、店らしい雰囲気はまだない。車を止めて、恐る恐る敷地に入って、さらに奥へ進んで行くとようやく店にたどり着く。地図にないのは探す楽しみもあると感じた。
写真3:パン工房と本来の店舗
写真の左の茶色の建物が自家製の天然酵母を育てたり、パンの仕込みをしたりする工房。右の青っぽいドアのおしゃれな建物が本来の店舗。この店舗、夏は暑くなるため、手前の母屋で販売している。