▼標高700m 天空の里
川内村上川内高田島地区は、田村市に隣接する村の北西部に位置し、阿武隈山系最高峰の大滝根山(標高1192m)の麓です。地区の全域が標高500~700mの傾斜地で、水稲・畑作よりも、葉たばこ栽培や養蚕、乳牛・肉用牛の飼育が盛んな里山農村地域でした。しかし、全村避難後は後継者世代の帰還が進まず、地区の高齢化率は5割を超え、農業規模の縮小から有休農地が年々増えてきました。
▼地域の農業を守る
「地域の農業は地域で守らなければならない。」農業者としての想いから有志が集まり「天空の里たかだしま構想」を打ち出し、地区内の交流をすすめ関係人口の拡大を検討する中で特産品の開発を進めました。シイタケやハウスブドウ栽培の他、水はけの良い傾斜地で栽培がしやすいものを検討している中で、農家が自家用で栽培をしていた自然薯に着目。2021年に種芋の定植をはじめました。
▼組織化で栽培技術と販路の確立
猪狩定一さんを代表に6人の賛同者で2023年「高田島自然薯栽培組合」を発足。共有地と各農家での栽培を開始しました。翌年(2024年)には600本を収穫。味よし・形よしと好評を得て、村のふるさと納税の返礼品にも選定されました。即売会開催時には村内外から多くの人が高田島に足を運び、予定数量が即完売するほどの盛況でした。
▼ブランドの確立を目指して
3年目の2025年、賛同者は10名に増え、1000本の生産を目指して種芋の定植を行いました。秋には販売会の開催も予定しています。また、栽培技術の向上を目指し先進地での研修、販路拡大のためのアプローチも積極的に取り組んでいます。
「10年後、高齢化・人口減少はもっと進む。今、我々の代で継承していかなければ地区の農業は守れない。地域を守るためにも自然薯のブランド化に取組んでいく。」会員であり高田島地区行政区長の井出寿一さんは話します。
「高田島自然薯栽培組合」では、栽培技術を磨き、近い将来1500本を収穫、「天空の自然薯」ブランド確立を目指しています。
(2025年4月15日取材S)
■名称 高田島自然薯栽培組合
■住所 福島県双葉郡川内村上川内高田島地内
写真トップ:川内村上川内高田島地区 大滝根山の麓につながる丘陵地が広がっている。水田となる平地は少ないが、良質の水に恵まれている。近くの峠には旅の僧が命を繋いだ「坊主清水」が今でも湧き続けている。
写真2:高田島自然薯栽培組合の会員であり、高田島地区の行政区会長でもある井出寿一さん。行政職員として川内村の復興を進めてきた。今後は高田島地区の農業継承と地域活性に力をそそいでいく、とのことでした。

写真3:会員相互での研修、共同作業を進め、2024年度は600本の自然薯を収穫することができた。(写真:2025年度高田島自然薯栽培組合総会資料より)
