鰻の陸上養殖に「熱い情熱を込める」元エンジニア(滝根町)


 鰻といえば、あの食欲をかき立てる良い香り。口に含んだ時のフワフワ感がたまりませんね。そんな鰻の養殖に、海から遠く離れた田村市滝根町で取り組んでいるのが『ニューフロンティア株式会社』です。養殖部顧問の山下尊宣(やましたたかのり)さんに話を聞いてきました。

 山下さんはもともと神戸市生まれの関西育ち。大手重工業メーカーに就職し、プラント技術者として大勢の部下を従えて活躍されていましたが、養殖業をやってみようと一念発起し、鰻やエビやチョウザメの養殖を行うために起業し、その分野でも成功を収めた方です。
 ちょうどその頃、東日本大震災と原発事故の影響で元気のない田村市を、新たな産業で活気づけようと立ち上がったのが『ニューフロンティア株式会社』の秋元社長でした。養殖に着目し、全国各地の情報を集めた秋元社長が山下さんに強く誘いをかけました。「鰻の陸上養殖をやりたいのでやってもらえないか」。

 「生まれ育った関西から遠く離れた場所、しかも知っている人もいない福島県で?」と思った山下さんでしたが、秋元社長の福島県を元気にしたいという熱い思いに感銘し、見ず知らずの滝根町という土地で「熱い情熱を込めて」鰻の陸上養殖にチャレンジすることとなったそうです。取材中何度も「熱い情熱を込める」という言葉を発する山下さんの原点がここにあります。

 決意を固めた山下さんは、養殖場を建設する土地探しから価格交渉まで一人で行い、養殖場の設計は元プラント技術者の経験を活かして自身で行ないました。結果、さまざまなハイテクを取り入れ、薬品を使わずに鰻の陸上養殖に成功。施設内は、養殖場独特のにおいや水の濁りも無く、鰻にとって最高の環境で養殖されています。

 山下さんが福島県に来て9年、準備期間に1年を要し養殖工場を開設して8年、ここまでの道のりは決して平たんではありませんでした。予期せぬコロナ禍、養殖に不可欠な電気代の急騰、人手不足など挙げればきりがありません。しかし、どんな時でも山下さんは「熱い情熱を込める」思いで養殖に取り組んでいます。

 今では地域の小学生が毎年社会科見学に訪れ、美味しそうに鰻を頬張っていきます。「子どもたちが大きくなって地元を離れても、あの時、滝根町で美味しい鰻をみんなで食べたよねと思い出話をしてくれれば嬉しい」と山下さん。
最近は徐々に知名度も上がり、福島県内はもとより他県からの注文も増えています。滝根町の養殖場では鰻の蒲焼、肝吸い、鰻のおむすび「うなおむすび」の直販売も行われ、おいしくてリーズナブルな価格ゆえリピーターが多いそうです。

 今後は「鰻の稚魚の繁殖からの完全陸上養殖を目指す」と山下さん。「それが難しいことは百も承知しているが、それも「熱い情熱を込める」ことで成し遂げてみせる」と熱く語ります。
 社名の通り、フロンティア精神に溢れる熱い山下さんです。

ニューフロンティア株式会社
住 所:〒963-3601 福島県田村市滝根町菅谷字矢立松37-1
電 話:0247-61-6657
URL:https://www.fuku-unagi.com/

トップ画像:鰻養殖に「熱い情熱を込める」山下養殖場長

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