地域密着から方針変更~SNSを駆使した経営転換 まるぎん(伊達市月舘町)

 「うちみたいな商売は、地域密着ではやっていけない」
「えっ?」と思うような言葉が飛び出しました。言葉の主は、伊達市月舘町で鮮魚を中心とした食料品店とガソリンスタンドを経営する『有限会社まるぎん』の中山貴徳さん(代表取締役)。旧月舘町で生まれ育ち、仙台市内で調理師としての修行を重ね、Uターン。2011年7月に代表を引き継ぐことになっていた中山さん。自身が思い描く経営方針にそった店舗のリニューアル計画も進み、着工を待つばかりだった同年3月、忘れることのできないあの日が訪れました。

 まるぎんの所在地は、一言で言えば山奥。旧月舘町と飯舘村の境界あたりに位置します。「飯舘村の中でも山間部がかつてのお得意様。一軒一軒配達して、灯油を届けついでに御用聞き。食料品や生活用品も届けるわけです。3000円の仕事を10000円にする。その頃は、文字通り地域密着でした」。ところが、あの日を境に様相は大きく変化しました。「飯舘村の全村避難で、お得意様がほぼゼロになったんです」。
 あの日とは、原発事故を受け飯舘村の全村避難が決まった日です。「お得意様が誰もいなくなった」状況に、「ただ立ちすくむしかなかった」と中山さん。どうやって顧客を確保していくか、中山さんの模索が始まりました。

 広告を出したところで、大きな期待はできません。中山さんが始めたのは、SNSを最大限に利用することでした。「山奥まるぎんです」「準備整いました」「50過ぎのオッサン!!カニ捕獲中」「宣伝ですよ~」など、中山さんの人柄そのままの言葉が読み手の心に響き、興味が湧いてきます。ちょっと行ってみようと思ってしまう! 行ってみれば、店の外にはお帰りなさいの大看板や笑処と書かれた看板、店に入れば魚屋なのに魚コーナーはほんのわずか。刺身を注文すると、目の前で切り始め、見事な刺し盛りが完成。お客さまの心は丸づかみされてしまいます。

 SNSにアップされた写真に値段はありません。「値段が知りたいとよく言われるけど、私はあえて値段は載せません。なぜならば~お買い上げ頂いたお客様が、自分のお刺身がアップされていたら嬉しいと思うけど、値段書かれてたら嫌だと思うから!!」と中山さん。こういう心遣いが魅力となって発信力を押し上げているに違いありません。
 
 「毎日の食卓用なら近所のスーパーで十分。でもある程度まとまったお金を払うなら、ここがいい」と、相馬市や丸森町から山を越えてお客様がやって来ます。お正月用の注文は10月末を待たずに予約完了。「うちを気に入ってくれたお客様が、また別のお客様を連れてきてくれる。ありがたいよね」。

 顧客ゼロ状態から復活し、予約時のみ営業の宴会も月に20日は埋まるようになった頃、また苦難が・・。新型コロナ感染拡大防止策による飲食店の営業中止、集団での会食自粛の影響は、「震災より酷かった」そうです。宴会予約は、月20日から年3回に激減。予約時のみ営業のスタイルは、飲食店補償の対象外。それでもSNSの力は大きく、「支えてもらった」と振り返ります。

 独自の経営方針を打ち立て、決してブレることなく歩み続ける中山さんの求心力は、とどまるところ知らず。今日も、遠方から山奥のまるぎんに足を運ぶお客様の笑顔が溢れているに違いありません。

まるぎん
住 所:伊達市月舘町布川字赤井堂8(GoogleMap
電 話:024−572−2039
URL:https://www.facebook.com/tukidate.marugin

トップ画像:有限会社丸銀代表 中山貴徳さん

画像:店舗外に設けられたお休み処

画像:おかえりなさいの文字がお客さまを出迎える

画像:地域のイベントにも積極的に出店