阿武隈さくら紀行 ~三春 滝桜の系譜、娘桜、孫桜~(三春町、郡山市、二本松市)

阿武隈さくら紀行 ~三春 滝桜の系譜、娘桜、孫桜~(三春町、郡山市、二本松市)

 日本には「春は花見から」と言われる文化があります。その花見には梅や桃など様々ありますが、やはり代表的な花見は桜だと言って良いでしょう。全国各地に桜の名所は数々あれど、福島県は桜の名所の宝庫。広大な県土は浜通り・中通り・会津地方に分かれ、開花時期がずれていることから長い期間(年によっては一か月間近く)桜見物を楽しめます。その中でも阿武隈地域が近年は桜の名所として大きくクローズアップされています。

 その理由は、日本三大桜として名高い「三春滝桜」が絶対王者として君臨し、全国各地から毎年数十万人の観光客が訪れているからです。樹齢は1000年以上と言われており、昼間観る滝桜も素晴らしいですが、夜にライトアップされた滝桜は最高です。近年は駐車場やフードコートも整備され、阿武隈地域の特色を活かしたお土産もたくさんそろっています。
トップ画像:三春町 滝桜
〒963-7714 福島県田村郡三春町滝桜久保296(Google Map)

 次に、その滝桜の娘桜と言われる郡山市中田町木目沢の「紅枝垂地蔵桜」ですが、近年は滝桜を観た後に訪れる観光客が増えてきています。色は鮮やかなピンク色でその点は親である滝桜を凌いでいます。
 木の根元には小さな祠があり、お地蔵さんが立っていることからその名が付けられました。母親である滝桜ほどの豪華さはありませんが、艶やかな濃いピンク色の着物を纏った姿は、愛らしい娘桜の印象を持ちます。
写真:郡山市 紅枝垂地蔵桜
〒963-0836郡山市中田町木目沢字岡ノ内(Google Map)

 同じく、滝桜の娘桜と言われる郡山市中田町上石の「不動桜」は、地蔵桜ほど観光客には知られておらずじっくり桜を鑑賞したい方にはお勧めです。山あいの傾斜地の一か所だけある高台に立つ一本の桜は儚くもありますが、数百年の間、しっかりと毎年桜を満開に咲かせてきた誇りを感じます。毎年桜を写真に収めているプロのカメラマンに訊いたところ、不動桜が一番撮り甲斐のある桜で、上手に撮るのが難しいとのことでした。
写真:郡山市 上石の不動桜
〒963-0711 福島県郡山市中田町上石舘(Google Map)

 二本松市東新殿の「福田寺の糸桜」も滝桜の娘と言われています。国道349号線の「道の駅さくらの郷」のすぐ裏手にある福田寺の入り口に立っています。この娘桜も母親の滝桜より色は濃く、枝垂れ振りは幅が非常にあって見ごたえがありますが、お寺の敷地内にひっそりと立っている姿はなにかもの悲しさを感じさせます。
写真:二本松市 福田寺の糸桜
〒964-0301 福島県二本松市東新殿(Google Map)

 同じ二本松市東新殿の「合戦場の枝垂桜」は滝桜の孫桜です。それは先に記した福田寺の糸桜の子桜と言われているからです。場所は福田寺から国道459号線の坂道を1キロほど上ったところ。周囲は菜の花畑が一面に広がり、整備された小高い丘の頂上の場所は日当たりも良く、露店も数多く出ていて多くの見物客で賑わっています。
写真:二本松市 合戦場の枝垂桜
〒964-0301 福島県二本松市大林字142(Google Map)

 まだまだ記載出来ないほどのたくさんの滝桜の子孫桜が阿武隈地域にはありますが、なぜこれほどまでに広範囲に広がって増えていったのでしょうか。それは肥沃な阿武隈地域の土地が桜には適しており、そこに滝桜の実をついばんだ野鳥が各地に運んだからと言われています。

 1000年の時を越えて咲き続ける滝桜、そして阿武隈地域に広がり咲くその子孫たち。毎年当たり前のように桜を愛でられるこの地域に感謝してこの「阿武隈さくら紀行」をお伝えします。