伝統に溶け込む「よそもの」 ~浅川の花火大会を支えてきたもの~


▼伝統的な花火大会の責任者は「よそもの」だった
300年以上の歴史を持つと言われる浅川の花火大会は地域の伝統文化そのもの。そんな花火大会の責任者を務めたのは、移住6年目のいわゆる「よそもの」。どうして「よそもの」が伝統を引き継ぐ責任者になることが出来たのだろうか。

▼キーワードは「ニコニコ」と「こだわらない心」
この「よそもの」は粕谷政斗さん、33歳。結婚を機にご夫人の地元である浅川町に埼玉県から移住。花火との出会いは地元の本町(もとまち)青年会に誘われたこと。移住者が入会したのは初めてだったが、すぐに溶け込めたという。いつも「ニコニコ」していることと、違いを感じても「こだわらない」ことがよかったのかなぁ、と粕谷さん。

▼責任者になって実感した伝統文化
そして昨年(2023年)、任期2年の青年会長に。花火大会は毎年8月16日と決まっているが、責任者の仕事は3月から始まる。役場、警察、消防、そして何より地域の人たちとのつながりが欠かせない。資金集めに町内を回ることも会長の大事な仕事だが、行く先々で激励や感謝の言葉がたくさん聞かれてそれが活力になる。責任者になったことで、町が総出の花火大会であることや伝統の重みのようなものを実感できたそうだ。

▼花火の迫力を後継者に伝えたい
花火の迫力は何といっても距離が近いこと。ほぼ真上で上がる花火は、見る美しさもさることながら、お腹に響きわたる重低音が最大の魅力。それは、自分で打ち上げに携わるとさらにその迫力を増すそうだ。今は責任者という立場で、打ち上げの場に立ち会えないことが残念で仕方がない。次のなり手不足が悩みだが、打ち上げの迫力を感じてもらえればやりたい人が出てくると信じている。

▼伝統文化が地域を持続可能にする源
浅川の花火大会には町外からも多くの人が訪れる。しかし、花火大会の原点は「慰霊」だという。青年会に入った当初から、先輩たちが事あるごとに口にしていた言葉が「慰霊」。だから、花火大会の前に行われる「慰霊祭」も大切な行事だ。この「慰霊」を大事にする風土が、伝統行事として長く受け継がれてきた秘訣なのだろう。伝統文化がその地域の持続可能性を支えることを実感した。
(2024年5月20日取材I)

写真トップ:この「ニコニコ」笑顔で見知らぬ土地にもすぐに溶け込めた。現在は、ご夫人の実家の家業(建築業)に従事し、大工仕事や施工管理を行っている。2人のお子さんのよきパパでもある。